うつ状態・うつ病での「抗うつ薬」の使い方(前編)

2025/11/26

うつ状態・うつ病での「抗うつ薬」の使い方(前編)

・治療はガイドラインの標準治療の第一選択薬を使うのが基本

 現代社会では、医学も医療も科学・技術も何もかも進んでおり一部の分野では成熟すらしています。

 例えばコレステロールに対しての治療薬の有効成分の一つであるスタチン系に分類される薬剤はロスバスタチン(クレストール)が開発されてから新たなものは出ていません。

 どの製薬会社もスタチン系の創薬をもう行っていないのでしょう。

 クレストールが発売されたとき「これが高コレステロールの完成形だ」と製薬会社の講演会で偉い先生が話していたと聞きました。
 実際、採血の結果で悪玉コレステロールが高く、生活習慣病が疑われる場合や問題になるほど高ければこれを出しておくことによって発生する問題は少ないです(悪玉コレステロールの影響を抑制、悪玉コレステロールの値を下げる)。

 スタチン系薬剤は筋肉の代謝に影響があり筋肉痛になりやすくなったりしますがそれもすぐ慣れます。それに筋肉は壊れてなんぼの器官(組織?)です。
 人は歩けば、足の筋組織は破壊されて、止まれば原則回復していきます。CKという成分を採血で測定するのですが、CKは筋肉や体を維持している組織の分解の程度を測定する項目と言ってよいです。
 通常通りに生活をしているにも関わらず、CKがずっと高い、ということであれば筋組織の融解症を疑ったりします。

 極端な話ですがボディービルダーやボディーメークしている人たちは筋肉をせっせと壊して超回復させて自分の目指す理想的なプロポーションを作っています。

・抗うつ薬も日本ではセロトニン関係の薬でいったん止まっている

 現在の日本の抑うつ状態・うつ病の治療では、シナプスにあるセロトニン受容体を何らかの方法で刺激する薬剤がメインになっています。

 セロトニンと関係ない作用機序の薬剤は多種多様ありまして、いずれの将来、日本ではまだ承認されてはいませんが、アメリカでは承認されているケタミン系の経口薬が導入されるといううわさがありますが現在はまだ使われていません(当然、保険診療でも使えません)。

 セロトニン系のSSRI、SNRI、NaSSaといわれる系統の薬が出て比較的最近S-RIMといわれるジャンルの薬が出ましたが、基本的にはそれらの薬剤が臨床で使われて久しく、現場でも研究でも十分経験も知見も蓄積しています。

 精神科に限らずですが、ある程度知見や経験の集まった成熟産業では普通のことは普通にするのが一番です(特に治療の初期や、初めて精神科・心療内科に来られた場合は尚のことスタンダードに治療を開始して身体・精神の反応を見るのが良いと思われます)。

 つまり、「普通のことを普通にする」とは診断がついたらその診断に対する治療ガイドラインに従って標準治療を行う、その標準治療に薬物療法があればガイドラインの第一選択薬の中から選択して治療するということになります。

・うつ状態、うつ病の治療

 抗うつ作用がある物質はいろいろあります。
上述しましたが、現在の日本の治療では抗うつ薬といわれるほとんどがセロトニン系の薬剤が主なものになっています。

 ちなみにセロトニン系の薬が第一選択薬にあがってくる病名(診断)はうつ病性障害など抑うつ症状主体の疾患以外にも神経症性障害の不安障害、強迫性障害、ストレス関連性障害でもやはりエビデンスレベルや推奨度レベルの高い第一選択になっています。

 最近のクリニックなどの外来診療では猫も杓子もセロトニンみたいなところがあります。

 抗うつ薬の歴史としては最初はヒスタミン仮説というのがあり抹消のヒスタミンを高めることがうつに良いという仮説があったのですが、その仮説は廃れてしまい、その派生として立てられたうつ病のセロトニン仮説が現在のところの現実的な選択肢になっています。

 それ以外にもノルアドレナリン仮説とかいろいろあったのですが脳のノルアドレナリンを高めても注意力や痛みにはよかったりしたのですが、特に意欲を上げることもなくうつにも聞かないという結論になり現在は顧みられなくなっています。
ただその副産物としてアトモキセチンというADHDの薬ができました。

 SSRIというシナプス間隙のセロトニンを高める薬、フルオキセチン(ブロザック)はアメリカで最初に登場したときには「奇跡の薬」といわれました。

 しかし日本ではおそらく治験の設計に失敗して保険適用薬ではなくなってしまいました(日本の保険診療機関では処方ができませんし、保険の調剤薬局でも取り扱いがありません)。
 外国では以前から使われています。

 それまでのセロトニン系の薬は三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、MAO阻害薬(抗うつ薬としては現在は使われていない)などが主に使われていましたがこれらは効果は強いのですが副作用も強く、使い続けることができないという忍容性の観点から副作用の少ないSSRIなどの新しい世代の抗うつ薬(新しいと言っても50年くらい前)の薬が第一選択薬になっています。

後編ではもう少し詳しく、薬や成分名を出してお話しようと思います。