睡眠薬の説明①

2025/08/21

睡眠薬の説明①

今回は『診療コラム』再開の1回目になります。
精神科での使用頻度の高い『睡眠薬』の大まかな分類と説明をしたいと思います。

・GABA受容体作動薬

GABAというのは神経伝達物質の名前です。
神経の興奮を抑えるという抑制性の作用(役割)があります。
量を調整して使うことで睡眠薬として使われています。

一番よくつかわれるのはベンゾジアゼピン受容体作動薬というもので、大変有名です。
他にも、成分名で言うとゾルピデムやゾピクロン、エスゾピクロンなどがあり、これらの薬は頭文字などに「Z」が付くことからZドラックと呼ばれます。

・翌日に眠気が残りにくい
・飲み忘れたとしても離脱の症状がない
・続けて飲んでも耐性が生じにくい
などの身体依存性の少なさから、この3剤だけが飛行機の操縦士さんも使用することが許可されている睡眠薬になります。

他に作用時間やGABA受容体のどの部分に結合をするかなどによって複数の種類の薬があります。
・寝つきを良くしてくれる睡眠導入剤
・寝ている間の睡眠時間や質を延長、向上してくれる睡眠維持薬
あるいは両方の作用を持った薬を使い分けます。

GABA作動薬には昔はバルビツール系と呼ばれる薬剤があったのですが、現在も使用が許可されているものもありはするのですが、最近は使うことが少なくなっているようです。

・オレキシン受容体拮抗薬

日本人が発見をした(!)オレキシンという物質関係の薬剤の総称です。

現在、世界で最も主流の薬になりつつあります。
2025年8月時点では、3種類が世に出ていて、新しく開発・流通するたびに売上か処方数が日本一になっています。
直近で出た薬(日本の保険診療で処方可能になった薬)は、まだ日本一ではありませんが世界で見ると世界一売れている薬になります。
3種類には共通点と違いがあるため、睡眠に関わる症状や状態をヒアリングした上で使い分けます。

・メラトニン受容体作動薬

かつての北欧では「夜の牛から絞ったミルク」が売られていました。
メラトニンが含まれているので眠りをよくする、ということで普通のミルクよりも高値で売られていたようです。

メラトニンという成分の入った薬剤やサプリメント自体は海外ではドラックストアや空港で売っています。
眠気を催す、ということもありはするのですが、それが主目的での使用とは言い難く、メラトニンは体内時計の調整作用があるため睡眠覚醒のリズム障害などに使用することが多いです。

日本の保険診療で使えるものとしては、小児に対してはメラトニンそのもの、大人にはメラトニン受容体作動薬が使われます。


・その他

いわゆる睡眠薬と呼ばれずとも睡眠作用がある薬はたくさんあります。

例えばサリドマイドと呼ばれる薬は、現在ですと多発性骨髄腫やハンセン氏病の薬として使われますが、昔は睡眠薬として使われていた時期もありました。

保険適用やお身体に他の病気がある場合や、脳や心の病気が複合している場合(疾患の合併がある場合)に学会で推奨されている薬や伝統的に使われ続けている薬もあります。

ただし、基本的には保険適用の範囲内(国が認めている使われ方に限定)で使われます。
正しい分類ではないですが、これらのものは睡眠補助剤とでも呼ぶことにします。

今回はここまでといたします。
またよろしくお願いいたします。