更年期障害(加齢による症状)について
更年期障害とは、加齢によってホルモンが大きく変調する更年期に入り、身体的・精神的な不調をきたすことです。
更年期の時期は子供が独立する時期と重なることが多く、急激な環境の変化に対応出来ず、気分の落ち込みや喪失感が長く続く、いわゆる“空の巣症候群”が発生することもあります。
そうした背景もあって、下記のような精神科的な症状を呈することも少なくありません。
当院では、漢方薬での対処もおこなっており、ご相談される方の背景にあった対応をいたします。ご不明点等ございましたら、遠慮なくお問い合わせください。
更年期・加齢の症状
更年期障害は、女性だけでなく、男性にもあることが知られています。男性の更年期障害には、男性ホルモンである“テストステロン”が大きく関係しています。
人生で一番テストステロン値が高い時期は20代で、中高年になってくると徐々に減少します。男性ホルモンの減少は、精神にも影響を及ぼし、やる気の減退やうつ症状などを招くことがあります。男性更年期の精神症状についてもご相談ください。
めまい
「めまい」は、原因によって、脳の障害による「中枢性めまい」と内耳や神経の障害による「末梢性めまい」は「前庭性めまい」に、さらに更年期によるめまいは、「非前庭性めまい」に分類されます。
めまいの種類
回転性めまい
床が揺れている感じがする
天井がグルグルと回っている感じがする
動揺性めまい
身体がフラフラする
失神型めまい
気が遠くなり倒れそうになる
「めまい」症状が起こる理由
ホルモンバランスの乱れによる自律神経の乱れやストレスが原因となりますが、加齢による機能低下も関係があると言われています。
不眠症状
なかなか眠れない、眠りが浅いなど、睡眠に関するトラブルは、いくつかのタイプに分けられます。治療は症状のタイプに応じて、睡眠薬を使い分けます。
寝つきが悪い場合には作用時間が短めのもの、睡眠中何度も目が覚めてしまう場合は作用時間が長いものを使う、といった具合です。ご自分の症状を詳しく説明し、正しい処方をしてもらうようにしましょう。
不眠症状の種類
一般に男女ともに加齢に伴い、不眠は高頻度となっていきますが、特に閉経後の女性は顕著なようです。睡眠に関する問題を抱える人は50歳以降の女性でより多かったという報告もあります。 不眠のタイプは大きく以下の4つに分類されます。
入眠障害
就寝後入眠するまでの時間が延長し、寝つきが悪くなるもの
中途覚醒
入眠後、翌朝起きるまでに何度も目が覚めるもの
早朝覚醒
通常の起床時間より2時間以上早く目が覚め、再入眠できないもの
熟眠障害
睡眠時間は十分であるにもかかわらず、深く眠った感覚が得られないもの
「不眠」症状が起こる理由
更年期に不眠が増加する一因として、ほてりや発汗といった血管運動神経症状が夜間に起こることで睡眠が妨げられることが考えられています。
また、不安や抑うつなどの精神症状に伴って不眠が生じることもあり、更年期の様々な心理社会的ストレスが原因となる場合もあります。
ほかにも、プロゲステロンやエストロゲンの生産減少が関連して、一般男性に多いとされている睡眠呼吸障害が閉経後の女性で増加していることも推察されています。
このように更年期の不眠の原因はさまざまで、更年期とは関係なく加齢自体が不眠の原因となっている場合もあります。不眠の原因を正しく理解し適切な対処を行うためにも症状に悩んだら医師に診てもらいましょう。
不安感
更年期の症状としてよく表れる症状のひとつに、不安感があげられます。 特別な理由も無く暗い気持ちになったり、以前は興味があったものに関心が無くなったり、 不安で落ち着きが無いといった症状が出現します。 他にも以下の様な、気持ちになる方もいらっしゃいます。
- 心がザワついて落ち着かない
- 自分の将来が不安になる
- 言葉では言い表せない不安・孤独を感じることがある
- このままでよいのかと落ち込んでしまう
「不安」症状が起こる理由
女性ホルモンは、脳の視床下部からの指令により卵巣から分泌されますが、卵巣の機能が衰えると、脳が「ホルモンを出せ」と指令を出しても分泌されず、視床下部・下垂体の機能に変調を来します。
視床下部はさまざまなホルモンの分泌や、精神活動なども司る自律神経のコントロールセンンターなので、この変調が律神経症状をはじめ精神神経症状などを引き起こします。
また、この時期独自の女性の心理特性や環境的な要因も大きいと考えられています。
更年期は、自身の子供の就職や自立、また結婚などにより、いわゆる「母親」としての役目が終わる時期と重なり、ある種の喪失感として受け止められる場合も少なくありません。
夫の定年により経済状態の変化も起こり、同時に先送りしていた夫婦関係の問題にも直面します。これまで妻、母親あるいは職業人としての社会的役割を持ち、健康で体力のあった体も、社会的役割が希薄になり健康に自信がなくなっていきます。
親の介護や親しい友人の病気や死を経験し、自身の人生についても考える機会が多くなります。更年期は喪失体験を伴う事象が数多く出現する時期であり、大きなストレスがいくつも重なる時期です。その意味で抑うつや不安をきたしやすい時期と言えるのです。
イライラ感・怒りっぽい
更年期を迎えると、精神安定作用のあるエストロゲンが減少するため、ちょっとしたことが気に障ってイライラしたり、ひどく怒りっぽくなるなどの変化が現れがちです。
自分でコントロール出来ず、日常生活に影響が出るような場合は、うつ病が隠れていたということもありますので、早めに、ご相談ください。
以下の症状がある場合は、早めに医師に相談しましょう。
- 急にイラっとする
- 突然に焦燥感にかられる
- ささいな出来事に腹が立つ
- 気が付くと顔がこわばっている
「イライラ」症状が起こる理由
セロトニンは、神経伝達物質の1つでストレスホルモンと言われるノルアドレナリンをコントロールし、精神を落ち着かせ、「幸せホルモン」とも呼ばれています。
セロトニンの生成に関わる女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、セロトニンが不足し、感情がコントロールできずにイライラするようになります。また、社会や家庭での様々なストレスにより、自律神経のバランスが崩れることも要因となります。
うつ症状
不安・あせり・気分の落ち込みなどは、更年期症状の一つですが、うつ病の症状としてもよく見られます。
これらの症状が更年期症状であれば、婦人科で適切な治療を受けることにより、ほとんどの場合、数ヶ月で快方に向かいますが、治療を続けても改善が見られないような場合は、ご相談ください。
以下の症状がある場合は、医師にご相談ください。
- 物事に対してほとんど興味がない、または楽しめない
- 気分が落ち込む、憂鬱になる、または絶望的な気持ちになる
- 疲れた感じがする、または気力がない
- 自分自身あるいは家族に申し訳ないと感じる
- 寝つきが悪く途中で目が覚める、または逆に眠りすぎる
- あまり食欲がない、または食べ過ぎる
- 動きや話し方が遅くなる、あるいは反対にそわそわしたり落ち着かず、ふだんよりも動き回る
- キレイ好きだったはずなのに、洗濯物・洗い物等が山積み
- 自分はダメな人間だと落ち込んでしまう
- 1つの作業に集中することが難しくなった
- 動きや話し方が遅くなったと言われた
「うつ」症状が起こる理由
更年期による卵巣機能の衰退は、エストロゲン減少により視床下部・下垂体の機能に変調を来し、自律神経症状をはじめ、内分泌系や免疫系の失調症状、精神神経症状などを引き起こします。
また、更年期は女性にとって心理・社会的にも不安定で全年齢を通して最もストレスを受けやすい時期と言われています。
更年期の心理社会的問題としては、親子関係の葛藤や子育てという役割を終えたことでの喪失感、子供が巣立ち改めて顕在化する夫婦間の問題、親の介護や死による心身の過労と喪失感、閉経や容貌の衰えなどの女性としての機能の喪失感、健康上の不安、などが挙げられます。
多くの女性はこのような様々な変化を受け入れ葛藤を自分で処理していきますが、一部の女性ではこれらの喪失感から自己評価が低下し、抑うつ気分、病的不安が引き起こされやすくなります。
不定愁訴
検査をしても異常が認められないのに、なんとなく体の調子が悪いという訴えを不定愁訴と言います。
- 全身倦怠感
- 微熱感
- 頭重
- 頭痛
- 肩こり
- 腹痛
- のぼせ
- 耳鳴り
- めまい
- 手足のしびれ
- 動悸
など、症状は多岐に渡ります。
各症状を医療機関で検査をしても異常が発見されない場合、身体症状としてうつ病が表われている(仮面うつ病)可能性があります。
また、男性にも更年期障害があることが知られてきていますが、男性の更年期障害には、男性ホルモンである“テストステロン”が大きく関係しています。
人生で一番テストステロン値が高い時期は20代で、中高年になってくると徐々に減少します。男性ホルモンの減少は、精神にも影響を及ぼし、やる気の減退やうつ症状などを招くことがあります。
男性更年期の精神症状についてもご相談ください。