統合失調症とは
統合失調症は、幻覚や妄想、興奮などの激しい症状のほかに、意欲の低下や感情の起伏の喪失、引きこもりなど、多彩な精神症状を呈する病気です。
以下の症状に思い当たることがあれば、チェックシートをお試しください。 チェックシートは、ご家族など周囲の身近な方に病気の可能性があるかチェックすることもできます。
- 周りに誰もいないのに声が聞こえる
- 感情が不安定になり、ささいなことで興奮してしまう
- 意欲や気力がなくなり、引きこもりがちになった など
※但し、医師による診断を代用するものではありません。
※チェックシートではお伝えすることができないことがありますので、ご容赦ください。
※ご不安なことやご不明なことは、医師の診療を受けてください。
統合失調症セルフチェック
最近1ヶ月で、以下の症状が当てはまる箇所にをチェック入れてください。
統合失調症について
統合失調症は、世界中の国や地域、民族を問わず、発症する、人類にとって非常に重要な疾患の一つです。いろいろな研究がありますが、100人に数人が発症するため、家族や同級生などの知り合いにも患者さんがおられる方は多いと思われます。
長らく科学的な解明が進みませんでしたが、最近では脳の神経系の発達異常や傷害が発症に関与するなどの説が提示され、生物学的な研究が徐々に進んできています。思春期から青年期に症状が顕在化していくことが多く、適切なケアがなされないとその後の人生に多大な影響をもたらします。
統合失調症は「100人いれば100人100様」と言われ、症状も経過も非常に多彩です。幻聴や妄想などの症状が有名ですが、それらの症状がない人もいます。
妄想は自分に関係のないことを自分に結び付けて考えてしまう関係妄想と言われるものが特徴で、さらに悪口を言われる、見張られているなどの被害的な関係妄想を持ちやすいため、影響されて様々な思考や行動の問題を起こすことが見られます。
また思考や行動の興奮状態により、社会的な逸脱行動を起こしてしまうことがあります。その他の様々な思考障害やうつなどの気分の障害、認知機能の障害など慢性期には活動性の低下、疲労・倦怠感、自閉、その他さまざまな症状が見られます。
急性期や症状の予防を中心に薬物症状が大切ですが、長期的な視点で考えると、病気と見るのではなく障害構造論に基づく社会復帰や社会参加のためのリハビリなどが重要になります。
統合失調症の症状
統合失調症の症状は、「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」と大きく3つに分けることができます。
統合失調症3つの症状
陽性症状 | 妄想 | 「テレビで自分のことが話題になっている」「ずっと監視されている」など、実際にはないことを強く確信する。 |
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幻覚 | 周りに誰もいないのに命令する声や悪口が聞こえたり(幻聴)、ないはずのものが見えたり(幻視)して、それを現実的な感覚として知覚する。 | |
思考障害 | 思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなる。会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかわからなくなることもある。 | |
陰性症状 | 感情の平板化 (感情鈍麻) | 喜怒哀楽の表現が乏しくなり、他者の感情表現に共感することも少なくなる。 |
思考の貧困 | 会話で比喩などの抽象的な言い回しが使えなかったり、理解できなかったりする。 | |
意欲の欠如 | 自発的に何かを行おうとする意欲がなくなってしまう。また、いったん始めた行動を続けるのが難しくなる。 | |
自閉(社会的引きこもり) | 自分の世界に閉じこもり、他者とのコミュニケーションをとらなくなる。 | |
認知機能障害 | 記憶力の低下 | 物事を覚えるのに時間がかかるようになる。 |
注意・集中力の低下 | 目の前の仕事や勉強に集中したり、考えをまとめたりすることができなくなる。 | |
判断力の低下 | 物事に優先順位をつけてやるべきことを判断したり、計画を立てたりすることができなくなる。 |
統合失調症症状の経過
統合失調症は病気の経過により、前兆期・急性期・消耗期(休息期)・回復期に分けられます。それぞれの病期で特徴的な症状が認められます。
- 不安・孤立・過労・不眠などによるストレスの蓄積は、症状の悪化や統合失調症の再発するきっかけとなります
- 統合失調症は、1日でも早く治療を開始していただきたい病気です。ご相談される方のために早期治療をすることで早期回復します。また症状も軽くすみます。
前兆期
- 眠れない
- 音に敏感になる
- 焦りの気持ち
- 気分の変わりやすさ
急性期
- 不安になりやすい
- 眠れない
- 幻聴妄想(内容は被害的なことが多い)
消耗期(休息期)
- 眠気が強い
- 体がだるい
- 引きこもり
- 意欲がない
- やる気がでない
- 自身がもてない
回復期
- ゆとりがでてくる
- 周囲への関心の増加
統合失調症の治療
統合失調症の治療は、薬物療法と精神科リハビリテーションがあります。 急性期には薬による治療が基本になりますが、なるべく早い時期から薬と精神科リハビリテーションを組み合わせた治療を行うことが効果的です。
薬物療法について
統合失調症の薬物療法の中心は抗精神病薬です。 抗精神病薬は、定型抗精神病薬(従来型)と非定型抗精神病薬(新規)とに分けられます。
定型抗精神病薬(従来型)
主に幻覚・妄想や考えをまとめられないといった陽性症状といわれる症状に効果があります。
【主な副作用】
- 錐体外路(すいたいがいろ)症状(手がふるえる、体が硬くなるなど、パーキンソン病様の症状)
- プロラクチンの上昇(生理が止まる、乳房がはる、乳汁分泌、性欲がわかない、など)
- のどの渇き
- 便秘
- 排尿障害
- 記憶障害、など
非定型抗精神病薬(新規)
陽性症状に効果があり、副作用の錐体外路症状(手がふるえる、体が硬くなる、など)が少なく、陰性症状(感情の平板化、思考の貧困、意欲の欠如など)に対する効果は定型抗精神病薬よりも高いといわれています。 また、認知機能障害への効果も期待できます。
※新規抗精神病薬でも、錐体外路症状、プロラクチンの上昇、眠気、口の渇き、心電図の変化などの副作用が出る場合があります。
※一部の薬剤については糖尿病の方には使用できません。
抗精神病薬の剤形
抗精神病薬には、以下のさまざまな剤形があります。 どのお薬にも全ての剤形があるわけではありませんが、主治医によく相談し、病気の状況や生活スタイル、飲みやすさなどから自分に合った剤形を選んで、飲み忘れをなくすようにすることが大切です。
経口剤(飲み薬)
- 錠剤・カプセル剤・細粒剤/散剤(粉薬):いわゆる飲み薬として一般的なものです。
- 口腔内崩壊錠(OD錠)・液剤(水薬/シロップ剤)・舌下錠:水なしでも飲むことができます。
※成分がゆっくりと継続して出てくる錠剤、液剤を携帯しやすくした分包品などのタイプもあります。
注射剤
- 注射剤:特に症状の激しい急性期など、効果を早く得たいときや内服が難しいときに筋肉注射や点滴で使われます。
- 持続性注射剤(:Long-Acting Injection、デポ剤):急性期に使われる注射剤とは異なり、注射した部位(筋肉内)に薬がとどまって徐々に血液に取り込まれていくため、即効性はありませんが、1回の注射で2~4週間効果が続きます。よく薬を飲み忘れる人や毎日の服薬にわずらわしさを感じている人などの助けになります。
症状の調整に使用される薬
抗不安薬 | 強い不安感や緊張感を和らげるために使います。作用時間や効き目の強さが異なるため、症状に合わせて処方されます。 |
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睡眠薬 | (睡眠導入薬) よく眠れない、寝つきが悪い、早朝に目が覚めてしまうなど、睡眠のリズムが狂ってしまう場合に使います。作用時間によって、長時間型、中間型、短時間型、超短時間型に分けられます。 |
抗うつ薬 | うつ症状を呈する場合に、憂うつな気分を和らげ、意欲を高めるために使います。抗うつ薬には、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬)があります。 |
※抗不安薬や睡眠薬を使うときの注意点
抗不安薬や睡眠薬の多くは同じベンゾジアゼピン系の薬剤で、抗不安効果より睡眠効果が優位なものを睡眠薬として使用します。効果が早く現れる一方で、眠気や注意力の低 下といった副作用がみられることがあります。 また、飲み続けると耐性や依存性が出たり、急に服薬を中止すると離脱症状(頭痛、手足のふるえ、眠れない、など)がみられる場合もありますので、医師と相談しながら使用してください。いずれも原則として短期間や頓服での使用がすすめられています。
副作用をおさえる薬
抗精神病薬の使用によって生じる副作用を抑えるため、次のような薬が処方されることがあります。
抗パーキンソン病薬 | 抗精神病薬によってドーパミンの働きが過剰に抑制されることにより生じる、手がふるえる、体がこわばる、足がむずむずするなど、パーキンソン病様の症状(錐体外路症状、抗精神病薬の働きとドーパミン参照)を和らげるために使います。 この薬は、副交感神経を刺激するアセチルコリンという神経伝達物質の働きを妨げることで錐体外路症状を改善しますが、一方で、口が渇く、便秘、おしっこが出にくい、認知機能低下などの副作用がみられることがありますので、これらの症状が気になる場合は、すぐに医師や薬剤師に相談しましょう。 最近では、錐体外路症状を起こしにくい薬剤の選択や用量の調整によって、できるだけ抗パーキンソン病薬の使用を減らす治療が推奨されています。 |
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便秘薬(緩下剤) | 便通を良くするために使います。 |
抗精神病薬の副作用
副作用とは、薬の本来の効果(主作用)以外の反応のことをいいます。本人にとっては不快なもので、日常生活にも影響が出る可能性があります。
副作用の出やすさは一様ではなく、薬剤の種類や患者さんごとに異なります。
薬を使って、「何かいつもと違う」「副作用ではないか?」と感じることがあったら、我慢したり、恥ずかしがったりせずにすぐに主治医や薬剤師に相談してください。
薬の量や種類を変更することで、副作用が改善される場合があります。また、副作用を抑えるための薬を処方してもらうこともできます。
薬の調整は医師と相談しながら行います。自分の判断で服薬を中止するのは大変危険ですからやめましょう。
副作用例
※ご自身の体質にあった薬を服用することで下記の症状が抑えられたり、副作用を抑える薬を処方する、など、医師が調整を行います。 ※その方により、副作用の症状は様々です。
- 日常の動作が障害されてスムーズな体の動きができない
- 体がうまく動かない、手がふるえる、体が前かがみになって小刻みに歩く、など
- 目が上を向く、ろれつがまわらない、首が反り返る、体が傾く、など
- 足がむずむずする、絶えず歩き回る、足を落ち着きなく揺らす、など
- 無意識に口が動く、手足が勝手に動く
- 唾液が増える、よだれがでる、など
- 体重が増える
- 糖尿病の悪化(糖尿病を持っていらっしゃる方には処方いたしません。)
- 脂質異常症(高脂血症)の悪化(脂質異常症(高脂血症)を持っていらっしゃる方には処方いたしません。)
- 生理不順になる、乳汁が出る
- 勃起しない、性欲を感じない(性機能障害)
- ぼーっとする、いつも眠い、体がだるい(過鎮静)
- 口が渇く
- 便秘
- 立ちくらみ、血圧低下(起立性低血圧)
統合失調症とメタボリックシンドローム
精神疾患にかかっているとメタボリックシンドローム(メタボ)になりやすいことが知られています。病気のために食生活や生活習慣が乱れがちになったり、健康への関心が低下してしまったり、また、抗精神病薬の中にはメタボを引き起こす可能性のあるものもあります。 定期的な体重を測定や血液検査を受けて、メタボチェックを続けましょう。
抗精神病薬服薬について
統合失調症は、再発しやすい病気です。 症状がよくなったように感じたとしても、服薬を止めると再発する可能性が高くなり、入院する割合も高まることが知られています。また、再発を繰り返すことで症状が悪化し、回復しにくくなる病気です。 服薬は、医師の指示に従い規則正しく続けましょう。
抗精神病薬服用時の注意事項
喫煙
喫煙はすすめられません。 薬の効果が低下することがあります。 喫煙がやめられない場合には、主治医に相談して喫煙の影響が少ない抗精神病薬を選んでもらいましょう。
アルコール
アルコールはすすめられません。 抗精神病薬をアルコールと一緒に飲むと、肝臓のもつアルコールを分解する働きと、薬を分解する働きがお互いに邪魔し合って、眠気やふらつき、立ちくらみなどの副作用が起きやすくなります。また、薬の効果を不安定にして、症状の再発や増悪をもたらすなどの影響があります。