うつ病について
- 日本では100人に3~7人がうつ病を経験します。
- 「憂うつな気分」や「気持ちが重い」といった抑うつ状態が、ほぼ一日中あってそれが長い期間続きます。
- うつ病の治療法は、一人ひとり違います。
- おかしいかな?と思ったらまずは専門家に相談しましょう。
- 何でも相談できる関係を主治医ともつことが治療の第一歩です。
もし、辛く悲しい気持ちが続くなら
日々の生活の中では様々な出来事があります。その中でも、辛く悲しい気持ちになることは誰しもが経験していると思います。通常はそのような出来事に対しても、数日が経過することで少しずつ前向きな気持ちに戻ってくるものです。
ところが何週間も、しかも一日中ずっと、そのような状態が続いているとしたら、それは「うつ病」なのかもしれません。もし、辛く悲しい気持ちが続くときには、精神科医師に相談することが大切です。
なかには精神科医療機関に通院することに抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、現代の日本では100人に3~7人がうつ病を経験しているという研究結果があります。そのため、これからの日本の社会では誰しもがうつ病に罹る可能性があります。
もはや精神科医療機関に行くことは恥ずかしいことではありません。うつ病は糖尿病などと同じで、早期に治療を開始することで重症化を防ぎ、早い社会復帰が出来る病気です。
うつ病の原因
うつ病については、わっていないことも多いですが、脳内の「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまうことによる病気だと考えられています。これらの脳内物質は精神を安定させたり、やる気を起こさせたりするものです。
そのため減少すると無気力で憂うつな状態になり、その状態が持続することでうつ病になると考えられています。もし、「憂うつな気分」や「気持ちが重い」といった抑うつ状態が、ほぼ一日中あってそれが長い期間続くようであれば、うつ病が考えられます。
うつ病の治療方法
うつ病の治療では、落ち込んだ気分を和らげ、睡眠リズムを改善することが大切になります。そのためには抗うつ薬を中心に、必要に応じて不安感を和らげる抗不安薬なども使っていきます。しかし、うつ病の治療方法は一人ひとり違いますので必ず医師に相談してください。
また、治療の途中では自尊心の低下や、意欲の低下、自責感情なども現れることがありますが、そのような気持ちが出てくるのも病気が原因です。医師と相談しつつ、しっかりと治療をすることで症状は改善して気持ちは楽になっていき安定した状態を維持できるようになります。
うつ病の特徴
次のうち5つ以上(1か2を含む)が2週間以上続いていたら精神科医師にご相談ください。
セリエのストレス学説について
うつ病について考えるには、セリエのストレス学説というものを念頭に置いて考えるといいかもしれません。
ストレス学説ではストレスを受けるとまず、警告反応期という状態になって心身に苦痛をもたらす様々な症状が現れます。 この時期はいわば心がストレスと戦っている時期です。
こころには不安、いらいら、感情失禁、情緒不安定など様々な分かりやすい症状が現れます。 体には自律神経失調、不眠、食思不振、肩こり、頭痛などやはり本人にも他人にもよくわかる症状が現れます。
その時期を過ぎるとストレスに対する抗病力が低下し、心身とエネルギーが消耗し疲弊してきます。 泣いてしまったり、体の不調を感じる生産的、救援信号的な反応は依然としてありますが、前景に出てくるのがエネルギー枯渇の症状です。それは主に、疲労感、やる気の低下、気力の低下などです。
そして、消耗から完全に燃え尽きてしまうと疲憊期に入ります。この時期には、自己の無価値観、判断力低下、喜びと興味を感じなくなる、動けなくなる、食べれなくなるなどもはや人間らしい機能を失ってしまいます。
うつが重症化すると妄想などの精神病症状、実存的意味の喪失としての自殺、全く体が動かなくなる、
不安焦燥から混乱状態になるなど、重度の精神症状が出現し、治療も回復も大変になります。
そのような状態は昔の精神科医は「本当のうつ病」などと呼び、ストレスがなくなると元に戻れるより軽症のうつ病から区別しました。 これはエンドン学説などとよばれテレンバッハという精神医学者が考えた説です。
反対にストレスがなくなると容易に戻れる状態を適応障害とか軽いうつ病、うつ状態とか言って、臨床では区別することがあります。 セリエのストレス学説でいえば警告反応期や初期の消耗期にある状態です。
セリエのストレス学説では、エネルギー枯渇の状態になると、心身が疲弊しているため、自分では、うつ病かどうかがわからないことがあります。もし、おかしいな?と思ったら、まずは精神科医に相談してください。
汎適応症候群の3つの段階(セリエ)
医師からのメッセージ
うつ病の方と、おはなしをさせていただくと、「生きている意味がわからない」とおっしゃられる方がいます。
わたしは、うつ病になることは、「生活に意味や価値を感じられない状態である」と思います。しかし誰でも、「生活に意味や価値を感じられなければうつ病になる」とも思います。
そして、うつ病の方は、「脳が働いていない」のではなく、「脳がしっかりと働いている」からうつ病になると感じます。社会的な問題についてしっかりと考えている方がうつ病になり、社会的問題の解決方法は、そのような方が悩んだ結果として見つかることが多いと感じます。歴史を振り返ってみても、世の中を変えた方は、うつ病を経験されています。
また、うつ病の方が回復へと向かうときに、「ほんとうに大切なこと」や、「人の生きる意味」などについて、深く悩んでいらっしゃると感じることがあります。わたしは、人がうつ病を経験することは問題解決のための「創造的な最初の一歩」かもしれないと思っています。
人は、うつ病になることで、「ほんとうに大切なこと」に気づき、自分らしい人生を歩んでいくのかもしれません。
そしてわたしは自身は、うつ病になられた方が新しい人生の一歩を歩みだす時、「悩みに寄り添い、そっとサポートさせていただくこと。」それが、私にとっての「ほんとうに大切なこと」だと考えています。
もし、つらいときや悲しいときには、当院へお越しいただいてご相談ください。その行動が、うつ病になられた方の、新しい生活へ向けた第一歩になることがあります。